「薬剤師で年収1,000万円は本当に目指せるの?」
一般的に薬剤師は高収入と言われますが、実際に年収1,000万円を超えている人は決して多くありません。
とはいえ、年収1,000万円は“一部の特別な人だけの世界”というわけでもなく、 働き方・キャリア戦略・職場選びを工夫すれば到達可能なラインです。
この記事では、薬剤師の平均年収や職場別の年収の目安を整理したうえで、年収1,000万円を狙いやすい働き方と、 現職のまま収入を上げる方法・転職で一気に年収アップを狙う方法まで、具体的に解説します。 「今より年収を上げたい」「いつかは年収1,000万円に到達したい」という薬剤師の方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント(目次)
- 薬剤師の平均年収と、年収1,000万円がどれくらい“高いライン”なのかが分かる
- 年収1,000万円が現実的に狙いやすい職種・働き方が分かる
- 今の職場のまま年収アップを狙う具体的な方法が分かる
- 転職で年収を底上げする際のポイントと注意点が分かる
- 副業・資格取得・独立を含めた長期的なキャリア戦略の考え方が分かる
1. 薬剤師でも年収1,000万円は夢じゃない?現状と課題
一般的に「高収入」と言われる目安としてよく挙げられるのが年収1,000万円です。 周囲からは「薬剤師=高給取り」というイメージで見られがちですが、 実際に働いている薬剤師の中には、 「思ったほど年収は高くない」「責任の重さを考えると、割に合わない」と感じている人も少なくありません。
まずは、薬剤師の平均年収や、職場による年収差を整理しておきましょう。
1-1. 薬剤師全体の平均年収はどれくらい?
厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和3年)」によると、 短時間労働者を除いた全国の薬剤師の平均年収は約580.5万円とされています。
同じ調査における大学卒全体の平均年収は約359.5万円、 大学院卒全体の平均年収は約454.1万円であり、 これらと比較しても薬剤師の年収は高い水準と言えます。
2020年以降のデータを見ても、薬剤師の平均年収は560万円以上を維持しているとされており、 「薬剤師は給与が比較的高く、かつ安定している」という一般的なイメージは大きく間違ってはいません。
とはいえ、平均580万円と年収1,000万円の間には大きなギャップがあります。 つまり、年収1,000万円を目指すのであれば、 「普通に薬剤師として働いているだけ」では届きにくいラインであることも事実です。
1-2. 職場別に見る平均年収と「年収1,000万超え」が狙えるフィールド
一口に薬剤師といっても、勤務先によって年収は大きく異なります。代表的な勤務先には次のようなものがあります。
- 調剤薬局(チェーン・個人経営)
- ドラッグストア(OTC販売併設・調剤併設)
- 病院・クリニック(大学病院・総合病院・中小病院など)
- 企業(製薬企業・CRO・SMOなど)
- 行政・公務員・学校・研究機関など
それぞれの職場ごとに年収のレンジは違いますが、 一般的には300万〜600万円台がボリュームゾーンです。 もちろん、役職や経験年数によって差はありますが、普通に働いているだけで1,000万円を超えるケースはごく一部です。
一方で、後述するように、 「職種」「勤務地」「役職」を工夫することで年収1,000万円に近づけるフィールドも存在します。 そこで次章では、薬剤師が年収1,000万円を目指しやすい具体的な働き方を紹介します。
2. 薬剤師でも年収1,000万円を超える働き方
薬剤師として年収1,000万円を目指すには、戦略的に「フィールド選び」をする必要があります。 代表的な3つのパターンを見ていきましょう。
働き方1. 外資系CRO業界でCRA職として働く
新薬開発の過程で行われる治験が、国の定める実施基準である GCP(Good Clinical Practice)を守って進められているかをモニタリングするのが、 臨床開発モニター(CRA)の仕事です。
CRAは、製薬企業の開発部門に所属する場合と、 CRO(Contract Research Organization:開発業務受託機関) に所属する場合があります。 特に、外資系CROでは実力次第で高年収を狙いやすい傾向があります。
CRA職は経験年数や役職によって年収に大きな差が出ますが、 管理職経験を積み、外資系CROに転職することで年収1,000万円以上を実現している人も多数存在します。
その分、語学力・専門知識・プロジェクトマネジメント能力などが求められ、 業務負荷も高めですが、「ガッツリ働いて高年収を得たい」「グローバルに活躍したい」という方には有力な選択肢です。
働き方2. 製薬会社でMRとして功績を残す
薬剤師の中でも、高収入を目指しやすい代表的な職種が製薬会社のMR(医薬情報担当者)です。
新人のうちは他職種との差はそれほど大きくないものの、 30代で年収1,000万円を超える人も珍しくありません。 MR職の年収が高くなりやすい理由として、次のような点が挙げられます。
- 営業手当・外勤手当・出張手当・残業手当など、各種手当が充実している
- 製薬企業は利益率が高く、給与・賞与の原資が大きい
- 住宅手当・家族手当などの福利厚生が手厚い企業が多い
- 賞与が営業成績に連動しており、成果次第で大きく増える
製薬企業のMRとして実績を出し続ければ、 役職が上がるだけでなく、インセンティブも含めて年収1,000万円に到達する可能性は十分あります。 一方で、目標数字へのプレッシャーや転勤リスク、勤務時間の不規則さなど、 ライフスタイルへの影響も大きい点は理解しておく必要があります。
働き方3. 地方の管理薬剤師として働く
調剤薬局やドラッグストア、病院などで管理薬剤師として働くのも、 年収アップを目指すうえで王道の選択肢です。
管理薬剤師には、一般薬剤師よりも多くの責任が求められるため、 役職手当・管理手当などが支給され、年収の大幅アップが見込めます。
特に、地方・郊外・人手不足エリアの管理薬剤師は需要が高く、 首都圏よりも高い年収が提示されるケースもあります。
「今すぐ1,000万円!」とまではいかなくても、 管理薬剤師+地方勤務+転勤可といった条件が重なると、 700〜800万円以上の年収レンジを提示される可能性もあり、 キャリアの組み立て方次第では1,000万円に近づく足掛かりとなり得ます。
3. 現職のまま給与を上げる6つの方法
「すぐに転職する予定はないけれど、今の職場で年収を上げたい」という方も多いでしょう。 その場合は、現職のままできる年収アップの工夫から始めるのが現実的です。
ここでは、比較的取り組みやすい6つの方法を紹介します。
方法1. 給与アップを交渉する
会社によっては昇給の仕組みがあいまいだったり、 中途採用者に対して「入社時の給与のままほとんど上がらない」というケースも見られます。
そのような場合、ただ「給料を上げてください」とお願いするだけでは、 期待通りの回答は得られないでしょう。
給与交渉をする際は、次のようなポイントを押さえておくことが大切です。
- これまでの具体的な実績・成果を整理して伝える
- 売上・処方箋枚数・業務改善など、会社へ貢献した事実を数字で示す
- 今後どのように貢献していきたいか、中長期のビジョンをセットで伝える
- 同業他社の年収相場を把握し、極端に高すぎない希望額を提示する
会社があなたを「辞めてほしくない人材」だと感じていれば、 一度の交渉で大幅アップとまではいかなくても、見直しのきっかけになる可能性は十分あります。
方法2. 残業手当の支払いルールを確認する
「サービス残業が当たり前になっている」「残業代の計算方法をよく分かっていない」という職場も少なくありません。
まずは就業規則や雇用契約書を確認し、 残業手当の有無・支給条件・みなし残業の範囲を把握しましょう。
残業代を請求することは労働者の権利であり、遠慮する必要はありません。 ただし、過度な長時間労働は健康を損ねるリスクもあるため、 労働基準法で定められている上限(月45時間など)も意識しながら働き方を調整することが大切です。
方法3. 休日出勤を積極的に希望する
薬局や病院、企業によっては、休日出勤に対して手当が支給される職場もあります。 多くの人は「休みの日は休みたい」と考えるため、休日出勤を敬遠する傾向があります。
もしあなたが「ある程度プライベートの時間を調整してもOK」「短期間で収入を増やしたい」と考えるなら、 休日出勤を希望して休日手当で収入を上乗せするのも1つの方法です。
ただし、休日出勤が増えすぎると心身への負担が大きくなるので、 「いつまで・どれくらいの頻度で頑張るか」を決めたうえで取り組むのがおすすめです。
方法4. ダブルワーク・副業で収入の柱を増やす
近年は副業を認める企業も増えつつありますが、 まだまだ就業規則で副業が禁止されている職場もあります。 まずは現在の職場で副業が可能かどうかを必ず確認しましょう。
副業が認められている場合、薬剤師としては次のようなダブルワークの形があります。
- 休日を利用して、別の薬局・ドラッグストアでパート勤務
- 単発派遣・スポット勤務で、空いている日にだけシフトに入る
- 在宅ワーク・オンラインを活用した医療ライターや監修業務などに挑戦する
特に、勤務薬剤師であれば別の薬局で働けるケースもあり、 本業+αの収入源を持つことで年収アップに直結しやすくなります。
ただし、休みなく働き続けると疲労の蓄積やミスの増加にもつながるため、 無理のない範囲で慎重に調整しましょう。
方法5. 認定・専門資格を取得して年収アップにつなげる
資格手当の支給や評価への加点など、 資格取得が年収アップにつながるケースも多くあります。
例えば、調剤薬局で働く薬剤師であれば、 次のような資格が代表的です。
- 研修認定薬剤師
- 認定実務実習指導薬剤師
病院勤務の場合は、より専門性の高い次のような資格があります。
- 糖尿病薬物療法認定薬剤師
- 薬物療法専門薬剤師 など
これらの資格は、現在の職場での評価アップだけでなく、 将来的な転職時のアピール材料にもなります。 自分のキャリアや興味関心とマッチする資格を選び、 計画的に取得を目指していきましょう。
方法6. 薬剤師として独立・開業する
年収1,000万円を本気で狙うなら、独立・開業も有力な選択肢です。 自分で薬局を開業したり、フランチャイズに加盟して経営の支援を受けながら店舗運営を行うなど、 薬剤師として独立する方法はいくつかあります。
ただし、独立は「薬剤師としてのスキル」だけでは成り立ちません。 次のような経営者としての能力も求められます。
- 経営戦略・数値管理(売上・利益・キャッシュフロー)の知識
- 人材採用・教育・マネジメントのスキル
- 医療機関や地域との関係構築力
- リスク管理・法令順守の知識
開業準備には時間と資金が必要になりますので、 いきなり独立に飛び込むのではなく、 経営に関する勉強や事業計画の策定など、 段階的に準備を進めていくことが大切です。
4. 転職で一気に給与アップを狙う4つの方法
現職のまま年収を上げるのにも限界があります。 より大きな年収アップを狙うなら、転職によるポジション・職場の変更も現実的な選択肢です。
ここでは、薬剤師が転職によって年収アップを目指す代表的な方法を4つ紹介します。
方法1. 管理薬剤師など管理職ポジションに転職する
調剤薬局やドラッグストア、病院などで働く場合、 最も分かりやすく年収が上がるのは管理薬剤師・管理職ポジションへの転職です。
管理薬剤師には、一般薬剤師と比べて責任範囲が広くなる代わりに各種手当が上乗せされます。 管理薬剤師の募集は比較的多く、 「ある程度の経験があり、マネジメントにも興味がある」という人にとっては狙い目のポジションです。
方法2. ラウンド(ラウンダー)薬剤師として複数店舗を回る
ラウンド薬剤師(ラウンダー薬剤師)とは、 特定のエリア内にある複数の店舗を掛け持ちで回って勤務する薬剤師のことです。
日ごと・週ごとに勤務店舗が変わることも多く、 生活リズムが安定しにくいというデメリットはありますが、 その分給与面での優遇や交渉の余地が生まれやすい働き方です。
「色々な店舗で働いてみたい」「環境の変化を楽しめる」という人にとっては、 年収を上げつつスキルと経験値を同時に高められる選択肢と言えるでしょう。
方法3. 全国展開している薬局・ドラッグストアに転職する
多くの支店を持つ大手チェーンの調剤薬局やドラッグストアでは、 転勤可能な薬剤師を高年収で採用するケースがあります。
「転勤可」の条件を受け入れることで、 転勤手当・地域手当などが上乗せされる場合もあり、 年収で数十万円以上の差がつくことも珍しくありません。
「ライフステージ的に今は動きやすい」「いろいろな地域で働いてみたい」 というタイミングであれば、年収アップの大きなチャンスになり得ます。
方法4. 離島・へき地など人手不足エリアの医療機関・薬局への転職
離島やへき地など、慢性的な人手不足に悩む地域では、 薬剤師の確保のために高い年収を提示しているケースがあります。
特に、知名度の低い地域や観光資源の少ない地域では、 人材確保のために年収の上乗せ・住宅手当・赴任手当などの条件が良くなることも多いです。
一人薬剤師としての勤務になる場合もあり、 責任は大きい反面、幅広い業務経験と交渉のしやすさが得られるのも特徴です。
5. 年収1,000万円を目指す薬剤師が押さえておきたい注意点
年収1,000万円を目指すこと自体は素晴らしい目標ですが、 お金だけを追いかけてしまうと、心身の健康やライフワークバランスを崩してしまうリスクもあります。
ここでは、高年収を目指す際に意識しておきたいポイントを整理しておきます。
- 長時間労働やストレス過多な環境が続くと、健康を損ねてしまう恐れがある
- 職場環境が合わないと、年収が高くても「辞めたい気持ち」が強くなりやすい
- 年収が上がるほど、税金や社会保険料の負担も増える
- 家族の転居・単身赴任など、ライフイベントに影響が出ることもある
高年収を目指す際は、 「いくら欲しいか」だけでなく「どんな働き方を続けたいか」という視点も忘れないようにしましょう。
6. 年収1,000万円に近づくためのキャリア設計のコツ
年収1,000万円は、「明日から急に届く」ラインではありません。 3年・5年・10年といったスパンで、キャリアと年収の両方を設計することが大切です。
6-1. 自分のキャリアの「軸」を明確にする
まずは、自分がどのような軸でキャリアを作りたいのかを整理しましょう。
- 専門性を高めたい(病院薬剤師・専門薬剤師など)
- ビジネス・営業のスキルを軸にしたい(MR・CROなど)
- ワークライフバランスを守りつつ無理なく年収アップしたい
- 将来的には独立・開業も視野に入れている など
軸がはっきりすると、どの働き方・どの職場を選ぶべきかが見えやすくなります。
6-2. 3〜5年ごとに「年収キャリアプラン」を見直す
年収1,000万円に近づくには、段階的な目標設定が重要です。
- まずは年収○○万円(例:600万円)を目標にする
- 次のステップとして○○万円(例:800万円)を狙う
- 最終的に1,000万円に到達するための働き方・ポジションを逆算する
ライフイベント(結婚・出産・介護など)によって優先順位は変わっていくので、 3〜5年単位で定期的にキャリアと年収のプランを見直すのがおすすめです。
6-3. 情報収集と相談の場を増やす
高年収の求人や好条件のポジションは、一般公開されていないケースも多くあります。
自分一人で求人サイトだけを眺めていると、どうしても情報が偏りがちです。 同業の知り合いからの口コミや、転職エージェントを活用した情報収集など、 複数のルートでキャリア情報を集めるようにしましょう。
7. まとめ|薬剤師が年収1,000万円を目指すなら「戦略」と「行動」がカギ
薬剤師の平均年収は500万円台後半と、一般的には高い水準にあります。 しかし、年収1,000万円となると、 働き方や職場を戦略的に選ばなければ届きにくいラインです。
この記事で紹介したように、薬剤師が年収1,000万円を目指す道は1つではありません。
- 外資系CROでCRAとしてキャリアアップする
- 製薬会社でMRとして成果を出し続ける
- 地方の管理薬剤師として高年収ポジションを狙う
- 現職のまま、交渉・副業・資格取得などで収入を底上げする
- 転職で管理職・ラウンド薬剤師・全国転勤可ポジションなどを選ぶ
- 長期的には独立・開業で高収入を狙う など
大切なのは、「どれが正解か」を探すことではなく、 自分の価値観とライフスタイルに合った道を選び、計画的に行動することです。
まずは現状の年収とキャリアを整理し、 「3年後・5年後にどれくらいの年収・どんな働き方をしていたいか」をイメージするところから始めてみましょう。 一歩ずつ着実に積み重ねていけば、薬剤師でも年収1,000万円は決して夢物語ではありません。

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