40代薬剤師の転職は難しい?よくある失敗事例と成功させる4つのポイント
40代になって転職を考え始めると、
「この年齢から本当に採用されるのかな?」「家族もいるし失敗できない…」と不安になりますよね。
たしかに一般的な転職市場では、年齢が上がるほどハードルは高くなる傾向があります。
しかし薬剤師は国家資格を持つ専門職。いまもなお慢性的な人手不足が続いており、40代でも十分にチャンスがあります。
とはいえ「どこにでも簡単に転職できる」わけではありません。
年齢相応の経験やスキルが求められますし、職場選びや準備を間違えると「転職しなければよかった」と後悔してしまうケースもあります。
この記事では、
- 40代薬剤師の需要と転職事情
- 職種別の転職難易度
- 40代薬剤師にありがちな転職の失敗事例
- 転職を成功させる4つのポイント
を分かりやすく解説します。
「今の職場にモヤモヤしている」「でも本当に動いていいのか迷っている」という方は、判断材料としてぜひ参考にしてください。
40代でも転職は十分可能!薬剤師の需要と転職事情
まずは、薬剤師を取り巻く全体の「市場感」を押さえておきましょう。
有効求人倍率3倍超え。薬剤師は依然として売り手市場
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、令和2年度の薬剤師の有効求人倍率は3.35とされています。
これは「求職者1人に対して、3件以上の求人がある」状態を意味しており、他職種と比べても求人数が多い職種だと分かります。
求人が多いということは、それだけ40代でも選べる余地があるということ。
年齢だけを理由にあきらめてしまう必要はありません。
コロナ禍以降、一時的に求人数は減少傾向
一方で、コロナ禍の影響で一時的に薬剤師の求人数が減っている地域・時期があるのも事実です。
- 外出控えにより、病院やクリニックの受診者数が減少
- 処方箋枚数が減り、薬局の売上もダウン
- 経営悪化を懸念して、新規採用を控える動き
こうした背景から、「以前より求人が減った」と感じる方も多いでしょう。ただしこれはあくまで一時的な現象であり、長期的に見ると薬剤師の需要がなくなるわけではありません。
専門性の高い薬剤師は今後も強く求められる
求人数がやや減ったとしても、専門性や経験を持つ薬剤師へのニーズはむしろ高まっていると言えます。
- 外来がん治療認定薬剤師などの専門資格を持つ人材
- 在宅医療の経験があり、訪問服薬指導や多職種連携ができる薬剤師
- 認定薬剤師・専門薬剤師などを取得し、学会活動や勉強会にも積極的な薬剤師
こうした人材はどの職場でも重宝されます。40代はまさに経験や資格を強みにできる年代なので、「自分には強みがない」と決めつけず、これまでのキャリアを丁寧に整理することが重要です。
活躍の場も「薬局一択」から多様化している
以前は「薬剤師=調剤薬局かドラッグストア」というイメージが強かったですが、今は次のように活躍の場が広がっています。
- 在宅医療の現場(訪問服薬指導、在宅患者の薬物管理)
- 病院のチーム医療(がん、感染症、緩和ケアなど)
- 企業(製薬会社、CRO、SMO、ドラッグストア本部など)
高齢化の進行により在宅医療のニーズは年々高まっており、在宅経験を持つ薬剤師は今後ますます重宝されるでしょう。
緩和ケア・介護・栄養など、周辺分野の知識も身につけておくと、40代でも転職の幅が広がります。
勤務先ごとに転職難易度は大きく異なる
同じ「薬剤師」といっても、働く場所によって求められるものは大きく変わります。
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 病院
- 企業・製薬会社 など
40代の転職では、「どこなら受かりやすいか」だけでなく、自分の強みが活かせる職場かどうかを見極める目が必要です。
【職種別】40代薬剤師の転職難易度
ここからは、代表的な4つの勤務先ごとに、40代の転職難易度とポイントを整理していきます。
薬剤師の世界でも「若手を育てたい」というニーズはあり、20代〜30代の方が採用されやすいのは事実です。
だからこそ、40代は自分に合うフィールドを見極めることが大切になります。
【難易度:低】ドラッグストア
ドラッグストアは出店数が非常に多く、人手不足になりがちな業態です。特に調剤併設型の店舗では、薬剤師の確保が大きな課題となっています。
そのため、
- 40代でも比較的応募が通りやすい
- 管理薬剤師やエリアマネージャー経験があれば管理職候補としての採用も狙える
といった特徴があります。
一方で注意したいのが、営業時間が長く、土日祝も勤務が発生しやすい点です。
- 早番・遅番のシフト制
- 土日祝の勤務
- 店舗によっては残業が多くなりやすい
など、家庭と両立しづらいケースもあるため、「年収が上がるならどれくらいの働き方まで許容できるのか」を事前に決めておきましょう。
【難易度:低】調剤薬局
調剤薬局は、薬剤師がいなければ営業できないことから、今もなお需要の高い働き先です。特に地方や郊外では、慢性的な人手不足が続いている地域もあります。
そのため、
- 調剤経験があれば40代でも十分に採用されやすい
- 管理薬剤師やエリアマネージャー経験があると条件交渉で有利
といったメリットがあります。
ただし、調剤薬局は店舗ごとの雰囲気や忙しさの差が非常に大きい業態でもあります。
- 門前の診療科や処方箋枚数
- 在宅件数の有無
- 人員体制(何人で何枚さばくのか)
などを事前に確認せずに入社すると、「前の職場より忙しくてつらい」「人間関係が合わない」と感じるリスクもあります。
応募前に労働条件・残業時間・在籍年数などのリアルな情報をできるだけ集めておきましょう。
【難易度:中】病院
診療報酬改定の影響などもあり、病棟薬剤業務を新たに始める病院が増え、病院薬剤師の需要は高まりつつあります。
とはいえ、大規模病院・急性期病院は若手採用に力を入れているところが多く、40代の未経験転職は簡単ではありません。
ただ、
- 中小規模の病院
- 慢性期病院・療養型病院
などでは、幅広い年齢層を受け入れているケースもあります。
注意したいのは、
- 薬剤師にも夜勤やオンコールがあるか
- 当直頻度はどのくらいか
- 急変対応など、どの程度求められるか
といった働き方に関する条件です。
病院を志望する場合は、「どこまで負担を許容できるか」を明確にしてから求人票をチェックしましょう。
【難易度:高】企業・製薬会社
薬剤師は、企業でもさまざまな職種で活躍できます。
- MR(医薬情報担当者)
- CRC(治験コーディネーター)
- CRA(臨床開発モニター)
- 品質管理・品質保証
- 研究開発・DI担当 など
土日休み・福利厚生が充実している企業も多く、「一度は関心を持ったことがある」という方も多いでしょう。
しかし企業求人は、
- 薬剤師に限定していない募集が多い
- 業界経験・営業経験などが求められることも多い
- 希望者が多く競争率が高い
などの理由から、40代未経験でのチャレンジはハードル高めです。
企業を目指す場合は、「薬剤師+αの経験」を積んだうえで長期的に狙う必要があります。
40代薬剤師にありがちな転職の失敗事例
需要があるとはいえ、40代の転職には失敗パターンもあります。よくあるケースを事前に知っておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
ケース1:想像以上に「経験が足りていなかった」
40代になると、「そろそろキャリアアップしたい」「専門性を高めたい」と考えて転職する人も増えます。
しかしいざ新しい職場に入ってみると、
- 扱う薬剤や疾患領域がこれまでとまったく違う
- 在宅や病棟など、未経験の業務が多い
- 周囲は自分より年下なのに、スキルは上
といったギャップに直面し、「年齢の割にできない人」と見られるのではと焦ってしまうケースも少なくありません。
特に、
- 新しいシステム・ルールに馴染むのが苦手
- 昔のやり方にこだわってしまう
というタイプの人は、「変化についていけない」と感じやすいので要注意です。
転職前に自分の得意・不得意と、転職先で求められるスキルとのギャップを冷静に確認しておきましょう。
ケース2:人間関係・雰囲気が合わなかった
求人票だけでは、人間関係や職場の空気感までは分かりません。そのため、
- 入ってみたらギスギスしていた
- 年齢構成が合わず、孤立してしまった
- 価値観の合わない上司がいてストレスが大きい
といった理由で、「仕事内容よりも人間関係がつらくて辞めたくなる」ケースは非常に多いです。
薬剤師の職場は比較的少人数体制が多いため、一度人間関係がこじれると逃げ場が少ないという現実もあります。
ケース3:労働環境が想像以上に過酷だった
「転職してみたら、仕事がつらすぎた」というのも典型的な失敗パターンです。
- 人手不足で1人あたりの業務量が多い
- 残業が慢性化している
- 夜勤・オンコールの頻度が高い
40代になると体力も20代の頃とは違います。
無理な働き方が続くと、体調を崩してしまったり、家族との時間が取れなくなったりと、生活全体が苦しくなる可能性があります。
求人票の「残業月〇時間」「夜勤あり」の一文を軽く見ず、実態ベースの労働環境をしっかり確認しておくことが重要です。
ケース4:期待していたほど年収が上がらなかった
「年収アップを狙って転職したのに、むしろ下がってしまった…」というのも、40代に多い失敗です。
特に、
- 前職で役職に就いていた
- インセンティブや手当込みで高年収だった
という方は、転職先で一旦ポジションがフラットになることで、給与が下がるケースがあります。
40代で再度年収を上げていくには、長く働き続けて評価を積み重ねる必要があります。「今だけ」ではなく3〜5年後のキャリアと年収のイメージも含めて転職先を選びましょう。
40代薬剤師が転職を成功させる4つのポイント
ここからは、40代の薬剤師が転職を成功させるために、特に大切にしてほしいポイントを4つに絞って紹介します。
1. 「転職の軸」をはっきりさせる
40代の転職は、できればこれを最後にするつもりで臨むくらいの覚悟が必要です。短期間で転職を繰り返すと、選考で不利になる可能性が高まります。
まずは、
- なぜ転職したいのか(不満だけでなく、叶えたいことも)
- 仕事において何を一番大切にしたいのか
- 絶対に外せない条件・妥協してもいい条件
を書き出して「転職の軸」を明確にすることから始めましょう。
転職の軸がはっきりしていれば、
- 求人選びの基準がぶれない
- 面接で説得力のある志望動機を語れる
- 入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しにくい
というメリットがあります。
2. 経験・スキルの棚卸しを徹底的に行う
40代の最大の武器は、これまで積み重ねてきた経験とスキルです。
まずは自分のキャリアを細かく棚卸ししてみましょう。
- 調剤・服薬指導の経験年数、対応してきた診療科
- 在宅や病棟など、特殊な業務の経験
- 認定薬剤師・専門薬剤師などの資格
- 新人指導・店舗管理・エリアマネジメントの経験
- 医師や看護師とのコミュニケーション事例
また、資格や実務スキルだけでなく、
- チーム内の調整役として動いてきた
- クレーム対応で信頼を得た
- 業務改善の提案をして、残業削減につなげた
といった「人間力」や「マネジメント力」に関わるエピソードも重要です。
こうした棚卸しは、履歴書・職務経歴書の作成や面接での自己PRに直結します。
3. キャリアよりも「働きやすさ」を重視する
40代の転職では、どうしても「これまでのキャリアを活かして、もう一段上のポジションへ」という気持ちになりがちです。
もちろん向上心は大切ですが、無理をして負担の大きい環境を選ぶと、長く続けられずにまた転職…ということにもなりかねません。
むしろ、
- 自分の体力・家庭状況に合った働き方ができるか
- 人間関係が良好で、相談しやすい雰囲気か
- 自分のペースで専門性を深めていけそうか
といった「働きやすさ」や「定着しやすさ」を優先する方が、結果的にキャリアの安定・年収アップにつながりやすくなります。
4. 薬剤師専門の転職エージェントに相談する
40代での転職は、求人選び・情報収集・応募書類の作成・面接対策などやることが多く、仕事を続けながら一人でこなすのは大変です。
そこで活用したいのが、薬剤師専門の転職エージェントです。
- 公開求人に加え、非公開求人も含めて紹介してくれる
- 希望条件に合う職場をプロの視点で提案してくれる
- 履歴書・職務経歴書の作成をサポートしてくれる
- 面接で聞かれやすい質問や、効果的な答え方を教えてくれる
- 年収や勤務条件の交渉を代わりに行ってくれる
例えば「ヤクジョブ」のような薬剤師専門サービスであれば、40代向けの求人や派遣・パートなど柔軟な働き方の相談にも対応してくれます。
転職に悩んでいる段階から相談できるので、「今すぐ転職するかまだ迷っている」という方でも、一度話を聞いてみる価値は十分にあります。
まとめ|40代薬剤師でも、戦略次第で転職は十分可能
40代薬剤師の転職について、ポイントを振り返ります。
- 薬剤師は有効求人倍率が高く、40代でも十分にチャンスがある
- 一方で、職種・勤務先によって転職難易度は大きく異なる
- ドラッグストア・調剤薬局は比較的転職しやすく、病院・企業はハードル高め
- 40代ならではの失敗事例(経験不足、人間関係、労働環境、年収ギャップ)にも注意が必要
- 転職の軸・経験の棚卸し・働きやすさ重視・エージェント活用が成功のカギ
手に職を持つ薬剤師だからこそ、40代からでも新しいキャリアにチャレンジする余地は十分にあります。
これまでの経験をしっかり武器にしながら、「自分らしく、無理なく続けられる働き方」を一緒に探していきましょう。
1人で抱え込まず、転職サービスやエージェントも上手に頼りながら、後悔のない一歩を踏み出してください。

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