マンジャロはどんな薬? ダイエット効果と安全性をわかりやすく解説
近年、糖尿病治療薬の中には「血糖を下げる」だけでなく、 体重減少・肥満症改善にも役立つ薬が登場しています。 その代表格のひとつが、2型糖尿病治療薬として開発された マンジャロ(一般名:チルゼパチド)です。
マンジャロは当初、糖尿病治療薬として承認されましたが、 その強い体重減少効果が注目され、 現在では肥満症治療薬としての役割も期待されています。 一方で、医療用医薬品である以上、副作用や使える人の条件など、 しっかり理解して使うことが何より大切です。
この記事では、メディカルダイエットを検討している方に向けて、 マンジャロの 作用の仕組み・体重減少効果・安全性・オゼンピックとの違い を、医師監修の情報をもとにわかりやすく解説します。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、 実際の診断・治療は必ず医師の診察のもとで行ってください。
1. マンジャロってどんな薬? 基本を整理
マンジャロ(チルゼパチド)は、 GIP/GLP-1受容体作動薬という新しいタイプの糖尿病治療薬です。
- アメリカ:2022年5月に2型糖尿病治療薬として承認
- 日本:2022年9月に2型糖尿病を適応症として承認
もともとは2型糖尿病患者さんの血糖コントロールのために開発されましたが、 インスリン分泌の調整だけでなく 食欲の低下や満腹感の持続にも影響することから、 体重減少効果が大きい薬として注目されています。
1-1. GIP/GLP-1受容体作動薬とは?
食事をすると、腸からインクレチンと呼ばれるホルモンが分泌されます。 代表的なインクレチンが GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)と GIP(胃抑制ポリペプチド)です。
これらのホルモンには、主に次のような働きがあります。
- 血糖値に応じてインスリン分泌を促進する
- 血糖を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑える
- 脳に働きかけて食欲を抑える
- 胃腸の動きを調整し、満腹感を持続させる
- 脂肪代謝に関与し、脂肪分解を助ける
既存のGLP-1受容体作動薬(リベルサス、オゼンピックなど)は GLP-1の作用のみを模倣するのに対し、 マンジャロはGLP-1とGIPの両方の受容体に作用します。 そのため、血糖改善と体重減少の両面で より高い効果が期待できるとされています。
1-2. 肥満症治療薬「ゼップバウンド」との関係
マンジャロと同じ有効成分・チルゼパチドは、 肥満症治療薬としても開発が進められました。
- 米国:2023年11月に「Zepbound(ゼップバウンド)」として発売
- 日本:2025年4月に「ゼップバウンド」として肥満症治療薬として発売
日本のゼップバウンドは、 医学的に「肥満症」と診断された方を対象とする保険適用薬です。 一方で、保険適用の条件を満たさない場合でも、 自由診療としてゼップバウンドを処方するクリニックもあります。
つまり現在は、 糖尿病治療薬としてのマンジャロと 肥満症治療薬としてのゼップバウンドという 2つのチルゼパチド製剤があり、 患者さんの病態や目的に応じて医師が使い分けています。
2. マンジャロのダイエット効果は? 体重減少メカニズム
メディカルダイエットでは、さまざまな種類の薬剤が使われます。 その中でもマンジャロは、GIP/GLP-1受容体作動薬として、 従来のGLP-1受容体作動薬より高い減量効果が期待される薬です。
2-1. 体重が減る仕組み
マンジャロは、GLP-1とGIPと同じようにインクレチンとして働き、 膵臓だけでなく、脳・消化管・脂肪組織・代謝全体に作用します。
- 膵臓への作用:血糖値が高いときだけインスリン分泌を促進し、血糖を下げる。
- 脳への作用:満腹中枢に働きかけて食欲を減らす。
- 消化管への作用:胃腸の動きを抑え、胃内容物がゆっくりと排出されることで満腹感を長く保つ。
- 脂肪組織への作用:脂肪の分解を促進し、脂肪の新たな蓄積を抑える。
- エネルギー代謝への作用:代謝を高め、消費エネルギーを増加させる。
これらの働きが組み合わさることで、 食事量の自然な減少+脂肪燃焼の促進という ダイエットに理想的な状態を作り出します。
2-2. 臨床試験で確認された体重減少効果
肥満症患者を対象とした臨床試験では、 マンジャロの高い体重減少効果が確認されています。
- 平均体重:100kg超
- BMI:27以上
- 投与量:5mg、10mg、15mg
上記条件で72週間マンジャロを使用した結果、 約15〜20%の体重減少が認められました。 これは一般的な食事・運動療法のみでの減量(約3〜4%)と比べると、 およそ5〜7倍の減量効果に相当します。
体脂肪量に関しても、30%以上減少したというデータがあり、 単に「体重が軽くなる」だけでなく、 脂肪量そのものがしっかり減っていることがわかります。
2-3. 維持療法でもさらなる減量が期待できる
マンジャロは、「痩せたところで終わり」ではなく、 減量後も継続することでさらに体重減少が期待できる薬です。
例として、マンジャロ(10mgまたは15mg)を9カ月使用して すでに約20%の減量に成功していた人(平均BMI30・体重85kg)を対象に、 その後1年間マンジャロを継続したところ、 減量後の体重からさらに5%以上の追加減量が確認されています。
もちろん個人差はありますが、 しっかりとした医師の管理のもとで継続することで、 長期的に体重をコントロールできる可能性が高い薬だと言えます。
2-4. 投与方法の概要
マンジャロは週1回の皮下注射で効果を発揮する薬です。 一般的には、
- まず2.5mgから開始する
- 副作用の様子を見ながら、少しずつ用量を増量していく
といったステップで使用されます。 ただし、実際の用量や増量のタイミングは 必ず担当医師の判断に従う必要があります。 自己判断で用量を増やしたり中止したりするのは危険です。
3. マンジャロの安全性は? 使えない人・注意が必要な人
マンジャロは高い効果が期待できる薬ですが、 医薬品である以上副作用のリスクも存在します。 安全にメディカルダイエットを行うためには、 あらかじめ副作用や使用できないケースを理解しておくことが大切です。
3-1. よくある副作用
マンジャロで比較的よくみられる副作用には、次のようなものがあります。
- 吐き気・嘔吐
- 下痢・便秘
- 腹痛・お腹の張り
- 消化不良
- 食欲減退
これらの症状は、初回投与時や用量を増やしたタイミングで起こりやすく、 多くは時間とともに治まります。 もし長く続いたり、日常生活に支障をきたすほどつらい場合には、早めに医師に相談しましょう。
吐き気が強いときは、 脂っこい食事を控える・一度に食べる量を少なめにする などの工夫で軽減できる場合もあります。
3-2. 重大な副作用と早期発見のポイント
頻度としては多くありませんが、 まれに重大な副作用が起こることがあります。 これらは早期発見が非常に重要で、疑わしい症状があれば すぐに服用を中止し、医療機関を受診する必要があります。
具体的な病名や発症率などは、必ず処方時に渡される 「くすりのしおり」や添付文書で確認してください。 少しでも不安があれば、自己判断せずに医師・薬剤師に相談しましょう。
3-3. マンジャロを使えない人・注意すべき人
マンジャロの使用に注意が必要なケースとして、以下のような例が挙げられます。
- 重度の胃腸障害がある人
- 膵炎・重い糖尿病合併症の既往がある人
- 低血糖を起こしやすい状態にある人
- 妊娠中、または妊娠している可能性がある人
- 授乳中の人
特に妊娠に関しては、動物実験で 胎児への影響の可能性が示唆されているため、 妊娠中や妊娠予定のある方は必ず医師に申し出る必要があります。 マンジャロ使用中および使用終了後1カ月間は避妊が推奨されます。
また、安全にメディカルダイエットを行うため、 多くのクリニックでは体重やBMIによる基準を設けたうえで マンジャロを処方しています。 そうした基準を設けていないクリニックや、 インターネット上の個人輸入代行・無許可の販売サイトなどでの入手は、 健康被害のリスクが高いため絶対に避けてください。
4. マンジャロとオゼンピック、どちらがおすすめ?
マンジャロと似た働きをもつ薬として、オゼンピック(セマグルチド)があります。 オゼンピックはGLP-1受容体作動薬であり、 GLP-1としての作用はマンジャロと共通ですが、 GIP受容体には作用しません。
4-1. 効果の比較
糖尿病を持たない肥満症患者を対象とした研究では、 マンジャロの方がオゼンピックより体重減少・ウエスト減少効果が高いことが示されています。
| 項目 | オゼンピック | マンジャロ |
|---|---|---|
| 体重減少率 | −12.9% | −19.2% |
| ウエスト減少 | −9.7cm | −14.6cm |
※オゼンピック2.4mg、マンジャロ10mgまたは15mgを比較したデータ
また、体重がどの程度減った人の割合を比較すると、 マンジャロの方がオゼンピックよりも 「しっかり体重が減った人」の割合が多いことも示されています。
- 5%以上減量できた人:マンジャロはオゼンピックの1.76倍
- 10%以上減量できた人:2.54倍
- 15%以上減量できた人:3.24倍
※標準用量(オゼンピック0.5mg、マンジャロ5mg)での比較
4-2. マンジャロが向いている人
上記の結果から、マンジャロは次のような方に適していると考えられます。
- リベルサスやオゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬で十分な効果が得られなかった人
- できるだけ高い減量効果を目指したい人
- 比較的早い段階から体重の変化を実感したい人
ただし、効果が強い分、適切な用量調整がより重要になります。 一般的には低用量(2.5mg)からスタートし、 副作用を見ながら段階的に増量していきますが、 用量変更は必ず医師の指示のもとで行いましょう。
一方で、費用面や既往歴、副作用の出方などによっては、 あえてオゼンピックなど他の薬剤が選ばれることもあります。 どちらが良いかは個々の状態によって異なるため、 医師とよく相談して決めることが大切です。
5. マンジャロに関するよくある質問
Q1. リベルサスやオゼンピックより副作用が強いのですか?
A. 重大な副作用や有害事象の発現頻度に関しては、 現時点ではマンジャロと他のGLP-1受容体作動薬との間で 大きな差はないとされています。
ただし、マンジャロは体重減少効果が高い分、 痩せすぎてしまうリスクがあります。 指示された用量・スケジュールを守らず、 自己判断で量を増やすことは絶対に避けてください。 体調の変化や体重の落ち方が不安なときは必ず医師に相談しましょう。
Q2. クリニック以外でも購入できますか?
A. メディカルダイエット目的のマンジャロ・ゼップバウンド使用は 保険適用外の自由診療となるのが一般的で、 医師の診察・処方が必須です。
インターネットサイトなどで、 医師の診察なしにマンジャロを販売しているケースは 違法行為にあたります。 偽造薬・不適切な保存による品質低下などにより、 重い健康被害を引き起こす可能性があるため、 絶対に購入してはいけません。
制度上は個人輸入も可能ですが、 手続きが煩雑なうえ、やはり偽物や品質不良のリスクがあります。 個人輸入代行業者経由での購入も同様に推奨されません。
また、友人や知人からの譲渡も法律で禁じられています。 医師の診察を受けずに使用すると、 想定外の副作用が起こるおそれがあるため、必ず避けましょう。
6. まとめ:マンジャロで安全にメディカルダイエットを行うために
マンジャロ(チルゼパチド)は、 2型糖尿病治療薬として開発されたGIP/GLP-1受容体作動薬であり、 その高い体重減少効果から 肥満症治療薬・メディカルダイエット薬としても注目されています。
ポイントをおさらいすると、次の通りです。
- GLP-1とGIPの両方に作用し、食欲抑制・満腹感の持続・脂肪燃焼・代謝アップを同時に促す
- 肥満症患者を対象とした試験では、体重15〜20%減・体脂肪30%以上減が報告されている
- 週1回の注射薬で、通常は低用量からスタートし、様子を見ながら増量する
- 吐き気・下痢などの消化器症状を中心に副作用があるため、医師の管理のもとでの使用が必須
- オゼンピックよりも体重減少効果が高い一方、痩せすぎリスクや費用も含め、医師と相談のうえ薬剤選択を行う必要がある
マンジャロは、適切に使用すれば肥満症改善の強力なサポーターとなり得る薬です。 しかし、「楽に痩せられる魔法の薬」ではなく、 医師の診断・指示に従いながら、食事療法や運動療法と組み合わせて使うことが前提です。
もしマンジャロを使ったメディカルダイエットに興味がある場合は、 オンライン診療を含めたクリニックで医師の診察を受け、 自分の体質や生活習慣、持病に合わせた安全な方法を一緒に検討してもらいましょう。
副作用が心配なときや体調に少しでも異変を感じたときには、 すぐに受診することが、安全に理想の体重を目指す第一歩です。

